京都の錫器作家が創る錫の酒器食器専門店【錫右衛門】ブログ

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錫作家 小泉均とその作品 その5

      2015/11/04

これまで学んだ鋳造の技術を生かし、
まずは、お皿、小鉢、箸置き、
花器の作品づくりから始めました。

ところが、

最初の思いとは裏腹に、

錫の扱いは思った以上に
難しかったといいます。

溶けた錫は柔らかく、
制作してもすぐにヒビが入りました。

自分のイメージとはかけ離れた
厄介な金属だったのです。

つくっては失敗し、
つくっては失敗するという日々が
数年続いたそうです。

それでも小泉氏は
別の金属に変えようとは
思いませんでした。

厄介な金属には
違いありませんが、

錫がもつ表現の可能性に
すっかり魅せられていたからです。
錫は柔らかいため、
普通の金属では
できないさまざま表現が
可能になります。

反面、強度不足のために、
普通の金属のような造形は不可能です。

例えば、取っ手をつけるには、
通常の取っ手に比べて太く大きくする必要があります。

「気難しいです。でも、難しいがゆえに、作っているほうは楽しいです。ある問題を解決した時の達成感は何ものにも代えがたい。錫の欠点を長所にしてあげることが何よりの楽しみなのです。そして、この楽しさを使ってくださるお客様と共有できれば、これほどうれしいことはありません」

うれしそうに語る小泉氏は、
1つのぐい呑みを見せてくれました。

短い足のついた可愛らしいぐい呑み。
錫右衛門で人気の商品「一目惚れの足付きぐい呑み」です。

このぐい呑みは当初、
もっと足を長くするつもりだったといいます。

しかし、柔らかい錫の性質のために、
自然と足が短くなってしまったそうです。

ところが、
出来上がってみると、
短足な姿がとてもユーモラスで、
愛嬌がある。

短所が長所に変わった瞬間です。

巻長皿、ポシェット形掛花入れなどもすべて、
欠点と思われた部分が美点となった作品です。

錫作家 小泉均とその作品 その6へ続く

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